自己主張は善か悪か

留学生活のなかで強く感じたことは、「自己主張の大切さ」です。よく言われることですが、日本にいると8割言えば10割伝わることが多いです。あとの2割は察してね、といった感じです。

一方カナダでは、言ったこと以上のことは通じません。自分の考えを相手にダイレクトに伝えることが大切で、これがマナーのようなものです。しかしこの文化は日本では、「あの人自己主張つよいね..」とネガティブな印象を持たれる可能性もあります。

少しカナダ留学で感じた「自己主張の大切さ」について、お話をさせてください。

伝えないと伝わらない

初めての仕事、日本食レストランで働いたときのことです。ここで働いているスタッフは、オーナーはじめ日本人のみです。ポジションは、キッチン、寿司、ウエイターの3つで構成されています。私は、ウエイター担当でお客様から注文をとり、キッチンと寿司にオーダーを通す役割を担っていました。

ある日のこと。

その日は、私の他にベテランスタッフがウエイターとしてシフトに入っていました。そのベテランスタッフとしては、とても珍しいことのですが、寿司の注文を間違って受けてしまったとのことで、作り直しをキッチンと寿司担当のスタッフに依頼しました。

そのときちょうどシャリが少なくなっていたみたいで、、作り直しを余技なくされた寿司職人はすごく怒りました。シャリがない、注文ミスだったうえに、謝罪の一言もなかったんですよね。(私のせいにしてきた訳ではないですが)ベテランスタッフが謝らないとなると、新人の私がミスったんだなって周りは思い、怒りの矛先は私に向かってきます。

わたしは事情を説明するのが面倒だと思ったので、物事がそのまま収まるならそっとしておこうと思い、なにも言いませんでした。そのベテランスタッフの評判があまり良くなかったこともあり、まあいつか分かることだろうとも思ってました。

数日後、他のスタッフとお出かけしたときに、このことが話題にあがりました。あのとき寿司職人おこってたよね、と。話の流れでこのとき真相を全て話しました。周りのスタッフは、「なんとなくそうは思っていたけど…その寿司職人は日本人だけど、海外生活が長いから、ちゃんと伝えないと気づかないし察してくれないよ」と教えてくれました。

伝える=相手を尊重している証

それから、私は自分の考えや相手が理解していない場合は正しく伝えることを意識して、残りの留学生活を過ごしていきました。このときまで「伝える」努力を怠ってきた私は、正しく伝えることで相手を傷つけしまうのではないかという感情があり、なかなか実践できなかったんですよね。

ただ周りの人が自分の想いや意見を伝える場面を観察してみると、「伝える=相手を傷つける」ではなく「伝えない=相手に失礼」と感じるようになりました。時間を要したものの、留学してから8カ月目にして、伝えるという文化が身に染み、自分の考えを口にして、正しく伝え、YESやNOをはっきりと言えるようになってきました。

帰国してからの葛藤

留学は、8カ月頃から楽しくなるといいますが、私の場合もそうでした。英語で伝えたいことが伝えるようになり、友達関係も構築でき、文化も馴染んでくるからです。しかし、ワーキングホリデービザで入国していた私に残された期間は、この時点であと4カ月。あっという間に時間が過ぎ去っていきました。

1年間の海外生活を終え、浦島太郎な気分で帰国。物事をはっきり伝える習慣が身に付いたため、帰国後には「外国かぶれ」と言われておりました….物事をはっきり言う=性格がきつくなった と捉える友人もちらほら。残念ながら疎遠になってしまった友人も何人かいます。。文化の違いって難しいですね。

「伝えること」は、大事なことだと思います。一方で、疎遠になってしまった友人に関していえば、私の伝え方、表現の仕方がストレートすぎたのかもしれません。ただ前半のエピソードでお話したとおり、伝えないと伝わらないわけで….

じゃあどうしたらいいのか。

これはもう自分の生き方、考え方次第でよいと思います。自分がどういう人でありたいのか、どういった価値観の人と付き合っていきたいのかそれによって自分のスタイルを変えていけばよいです。ただひとつだけ補足するとすれば、自己主張をするということは、自分の意見を常にもっている必要があるため、とそういった面でみれば、自己主張が強い人=自分の軸をもった強い人(性格がきついくない人もたくさんいます)という見方もあるかなと思います。

ちなみに、帰国後はこの文化の違いに対していろいろと悩むことが多かったですが、帰国して3年もたつと、自分のなかでいい塩梅を見つけられます。3年もかかったのか、と思われるかもしれませんが、かなり時間がかかりましたね。。

でもこれを読んでくださっている方は、大丈夫です。だれからどう思われるか、ではなく自分をもつことを心がければ、3年を耐える必要もなく、あなたらしく生きていけます。