仕事のスキルを上げたいけど、何から始めればいいんだろう?
そう考えている人は多いのではないでしょうか。 毎日与えられたタスクをこなすだけ。言われたことしかしない。
もしかして、あなたは「指示待ち人間」になっていませんか?
今回は、仕事のスキルを一段引き上げるための、たったひとつの思考のコツをご紹介します。質問の仕方を変えるだけで、あなたの仕事への向き合い方がガラリと変わるかもしれません。
レベル1:「どうしたらいいですか?」に潜む心理
上司や先輩に「これ、どうしたらいいですか?」と尋ねるのは、仕事を始めたばかりの人がよくやってしまう質問です。一見丁寧なようですが、この質問は自分の思考を停止させ、相手にすべての判断を委ねてしまうことにつながります。
この背景にある心理は、「外部帰属(External Attribution)」という考え方です。これは、問題や結果の原因が自分以外の外部にあると考えることです。つまり、「正解はあなた(上司や先輩)が知っているはず。私はそれを待っているだけ」という潜在的な意識が隠されています。
この思考がエスカレートすると、「学習性無力感(Learned Helplessness)」に陥る可能性があります。
マーティン・セリグマンの「学習性無力感」
この概念は、アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが提唱したもので、もともとは犬を使った実験で発見されました。
実験では、3つのグループに分けられた犬がいました。
- グループ1: 電気ショックを与えられても、特定の行動(レバーを押すなど)をすればショックを止められるグループ。
- グループ2: 電気ショックをコントロールできず、いつ終わるかわからないグループ。
- グループ3: 電気ショックを受けないグループ。
その後、すべての犬が電気ショックを避けられる場所(柵を飛び越えるなど)に移されました。その結果、グループ1と3の犬はすぐに電気ショックを避ける方法を学習しましたが、グループ2の犬は、避ける手段があるにもかかわらず、何も行動せず、ただ耐えるだけでした。彼らは過去の経験から「自分にはどうすることもできない」と学習してしまったのです。
この「学習性無力感」は人間にも当てはまり、仕事の場でも同様の現象が起こりえます。
「どうしたらいいですか?」と繰り返し尋ね、他者に判断を委ねることで、無意識のうちに「自分には問題を解決する力がない」と学習してしまうのです。これにより、主体性や行動力が失われ、いつまでも指示を待つだけの状態から抜け出せなくなります。
レベル2:「~したほうがいいですか?」の限界
レベル1から一歩進んだのが、「~したほうがいいですか?」という質問です。自分なりに考えた選択肢を提示し、相手に是非を問うスタイルです。
これは、自分の考えを少しでも盛り込んでいるため、レベル1よりは良いアプローチです。しかし、依然として判断の最終責任は相手にあるという問題が残ります。
この質問の裏側にも、「もしこの選択肢が間違っていたら、あなたのせいだ」という責任転嫁の心理が潜んでいる場合があります。結果がうまくいかなかったときに、「上司がOKと言ったから」と安易に考えてしまうリスクがあるのです。
レベル3:「~したいのですが、~の理由で。いいですか?」
デキる人が使うのが、この「レベル3」の質問です。
この質問には、次の3つの要素が含まれています。
- 「~したいのですが」:自分の意思を示す
- 「~の理由で」:その意思に至った思考プロセスや根拠を示す
- 「いいですか?」:最終確認を求める
この質問は、問題や結果の原因が自分自身にあると考える「内部帰属(Internal Attribution)」の思考に基づいています。
たとえば、「この資料ですが、より見やすくするためにグラフを多く使いたいと考えています。その方が視覚的に訴えかけやすく、結論を素早く伝えられると思うからです。この方向性で進めてもよろしいでしょうか?」という質問です。
このような質問をすることで、あなたは自分の思考プロセスを相手に開示し、建設的な対話を生み出すことができます。もしあなたの考えに足りない部分があれば、相手はそれを補足してくれますし、別の良い方法を提案してくれるかもしれません。
この「内部帰属」は、心理学者のジュリアン・ロッターが提唱した「統制の所在(Locus of Control)」という概念にも関連します。統制の所在が内的(Internal)な人は、自分の行動や努力が結果を左右すると信じています。一方、外的(External)な人は、運や他者など外部の要因が結果を決めると考えます。
内的統制の所在を持つ人は、仕事や人生において、より高いモチベーションを持ち、困難な状況でも諦めにくい傾向があることがわかっています。
まとめ:思考を変えることで、あなたの仕事はもっと面白くなる
「どうしたらいいですか?」という質問は、あなたの「学習性無力感」を助長し、成長の機会を奪ってしまうかもしれません。
一方で、「~したいのですが、~の理由で。いいですか?」という質問は、あなたの「内部帰属」の思考を鍛え、主体性と行動力を引き出します。
ほんの少し質問の仕方を変えるだけで、あなたの仕事に対する向き合い方は劇的に変わるはずです。そして、その変化は、あなたのキャリアをより豊かなものにしてくれるでしょう。
もし、あなたが今、「どうしたらいいですか?」と聞いている自分に気づいたら、一度立ち止まって「自分ならどうするか」を考えてみてください。
その小さな一歩が、きっとあなたの未来を切り拓く大きな力になるはずです。

